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( 2024/11/28 )
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無為祈願
( 2007/09/23 )
後悔、という言葉を使うのは、久し振りだった。
「………」
リボーンは動かない。執務室の机で、沢田綱吉は今日も仕事をしている。
「おい」
「んー?」
「おい」
「今忙しい」
「おい」
「何?」
生返事しかしない相手に苛立ち、ソファから立ち上がる。
「ツナ、ダメツナ」
「態々『ダメ』を付ける必要無いじゃん。で、何?」
「何、じゃねェ」
本当は。
知っている。この男はこの自分にすら計り知れない存在。
なのに何処までも平凡で、だからこその彼。
《識って》いつのは綱吉で、知っているのはリボーンだ。判っているのは綱吉で、解っているのはリボーン。
「馬鹿みてェだ」
「そりゃあ、人間だから」
馬鹿じゃない人間なんてね。
いないんだよ、リボーン。
優しく優しく優しい、諭すような物言い。この男にとって、自分は何だ?
「お前にとって、俺は何だ?」
「先生でしょう?」
「何も教えた覚えはねェんだがな―――」
「学んだよ」
人としての生き方を。
人とは、一体如何言う《存在》なのか、それを。
「ね、知ってた? 俺、物凄くお前に感謝してるんだ」
「…………知ってる」
低い、声。
彼にあるのは信頼、それだけ。
本当に、それだけ。
「……お前」
声は掠れた。
「本当は、知ってるんだろ? 《識って》いるんだろう?」
お前は。
俺が。
一体何を求めているのか、それを。
「―――――」
少しだけ、綱吉は動きを止めた。
動きを止めて、少しだけ寂しげに、言う。
「ねぇ、リボーン。教えて上げる」
全てを知っていて、けれど何も《識る》事は出来ない君に。
「愛ってね、永遠じゃないんだ」
「………ッ」
「気持ちは変わる。心は動く。絶対に。不変のものなど、有り得ない」
「だから、お前は誰にも応えないのか」
「そう」
彼の笑顔は綺麗だ、と言った者は誰だったか。
彼の笑顔が綺麗なのはその心根に穢れが無いからだ。誰よりも世界を《識って》いた彼は、だからこそ誰よりも世界から遠い。
「落ちろ」
落ちろ。
堕ちろ。
俺の、手の届く所まで。
「お前は、……高過ぎる」
地の底にいる自分には、眩し過ぎるのだ。
「何言ってんのさ、先生」
くすり、と。
綱吉は笑った。
リボーンは言う。いっそ懇願にも似て。
「良い。永遠じゃねェなんて、俺も知ってる。けどな、一日一日が重なって俺が死ぬまで変わらなかったら、それは永遠と同義じゃねェのか」
「……さぁね」
彼の前に立つ。その顔を覗き込んで、リボーンは思う。
淡い、氷にも似た、色。
今にも溶けて、消えて、
無くなりそうな。
「……ツナ」
「ん?」
「ツナ」
「何?」
声は、優しい。
何故。何故自分は。
「頼む。頼むから、横にいろ」
「いるよ」
にこり、笑うその唇に、リボーンは己のそれを押し付けた。
願いと、
祈りと、
想いと、
その全てが無意味な事を、知っている。
「……頼む」
いつから自分はこんなにも弱くなって仕舞ったのだろう、とリボーンは溜め息を吐いた。
「………」
リボーンは動かない。執務室の机で、沢田綱吉は今日も仕事をしている。
「おい」
「んー?」
「おい」
「今忙しい」
「おい」
「何?」
生返事しかしない相手に苛立ち、ソファから立ち上がる。
「ツナ、ダメツナ」
「態々『ダメ』を付ける必要無いじゃん。で、何?」
「何、じゃねェ」
本当は。
知っている。この男はこの自分にすら計り知れない存在。
なのに何処までも平凡で、だからこその彼。
《識って》いつのは綱吉で、知っているのはリボーンだ。判っているのは綱吉で、解っているのはリボーン。
「馬鹿みてェだ」
「そりゃあ、人間だから」
馬鹿じゃない人間なんてね。
いないんだよ、リボーン。
優しく優しく優しい、諭すような物言い。この男にとって、自分は何だ?
「お前にとって、俺は何だ?」
「先生でしょう?」
「何も教えた覚えはねェんだがな―――」
「学んだよ」
人としての生き方を。
人とは、一体如何言う《存在》なのか、それを。
「ね、知ってた? 俺、物凄くお前に感謝してるんだ」
「…………知ってる」
低い、声。
彼にあるのは信頼、それだけ。
本当に、それだけ。
「……お前」
声は掠れた。
「本当は、知ってるんだろ? 《識って》いるんだろう?」
お前は。
俺が。
一体何を求めているのか、それを。
「―――――」
少しだけ、綱吉は動きを止めた。
動きを止めて、少しだけ寂しげに、言う。
「ねぇ、リボーン。教えて上げる」
全てを知っていて、けれど何も《識る》事は出来ない君に。
「愛ってね、永遠じゃないんだ」
「………ッ」
「気持ちは変わる。心は動く。絶対に。不変のものなど、有り得ない」
「だから、お前は誰にも応えないのか」
「そう」
彼の笑顔は綺麗だ、と言った者は誰だったか。
彼の笑顔が綺麗なのはその心根に穢れが無いからだ。誰よりも世界を《識って》いた彼は、だからこそ誰よりも世界から遠い。
「落ちろ」
落ちろ。
堕ちろ。
俺の、手の届く所まで。
「お前は、……高過ぎる」
地の底にいる自分には、眩し過ぎるのだ。
「何言ってんのさ、先生」
くすり、と。
綱吉は笑った。
リボーンは言う。いっそ懇願にも似て。
「良い。永遠じゃねェなんて、俺も知ってる。けどな、一日一日が重なって俺が死ぬまで変わらなかったら、それは永遠と同義じゃねェのか」
「……さぁね」
彼の前に立つ。その顔を覗き込んで、リボーンは思う。
淡い、氷にも似た、色。
今にも溶けて、消えて、
無くなりそうな。
「……ツナ」
「ん?」
「ツナ」
「何?」
声は、優しい。
何故。何故自分は。
「頼む。頼むから、横にいろ」
「いるよ」
にこり、笑うその唇に、リボーンは己のそれを押し付けた。
願いと、
祈りと、
想いと、
その全てが無意味な事を、知っている。
「……頼む」
いつから自分はこんなにも弱くなって仕舞ったのだろう、とリボーンは溜め息を吐いた。
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