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御題此処から。って自分のサイトじゃん。


愛が永遠だなんて、誰が言ったの

 後悔、という言葉を使うのは、久し振りだった。
「………」
 リボーンは動かない。執務室の机で、沢田綱吉は今日も仕事をしている。
「おい」
「んー?」
「おい」
「今忙しい」
「おい」
「何?」
 生返事しかしない相手に苛立ち、ソファから立ち上がる。
「ツナ、ダメツナ」
「態々『ダメ』を付ける必要無いじゃん。で、何?」
「何、じゃねェ」
 本当は。
 知っている。この男はこの自分にすら計り知れない存在。
 なのに何処までも平凡で、だからこその彼。
 《識って》いつのは綱吉で、知っているのはリボーンだ。判っているのは綱吉で、解っているのはリボーン。
「馬鹿みてェだ」
「そりゃあ、人間だから」
 馬鹿じゃない人間なんてね。
 いないんだよ、リボーン。
 優しく優しく優しい、諭すような物言い。この男にとって、自分は何だ?
「お前にとって、俺は何だ?」
「先生でしょう?」
「何も教えた覚えはねェんだがな―――」
「学んだよ」
 人としての生き方を。
 人とは、一体如何言う《存在》なのか、それを。
「ね、知ってた? 俺、物凄くお前に感謝してるんだ」
「…………知ってる」
 低い、声。
 彼にあるのは信頼、それだけ。
 本当に、それだけ。
「……お前」
 声は掠れた。
「本当は、知ってるんだろ? 《識って》いるんだろう?」
 お前は。
 俺が。
 一体何を求めているのか、それを。
「―――――」
 少しだけ、綱吉は動きを止めた。
 動きを止めて、少しだけ寂しげに、言う。
「ねぇ、リボーン。教えて上げる」
 全てを知っていて、けれど何も《識る》事は出来ない君に。
「愛ってね、永遠じゃないんだ」
「………ッ」
「気持ちは変わる。心は動く。絶対に。不変のものなど、有り得ない」
「だから、お前は誰にも応えないのか」
「そう」
 彼の笑顔は綺麗だ、と言った者は誰だったか。
 彼の笑顔が綺麗なのはその心根に穢れが無いからだ。誰よりも世界を《識って》いた彼は、だからこそ誰よりも世界から遠い。
「落ちろ」
 落ちろ。
 堕ちろ。
 俺の、手の届く所まで。
「お前は、……高過ぎる」
 地の底にいる自分には、眩し過ぎるのだ。
「何言ってんのさ、先生」
 くすり、と。
 綱吉は笑った。
 リボーンは言う。いっそ懇願にも似て。
「良い。永遠じゃねェなんて、俺も知ってる。けどな、一日一日が重なって俺が死ぬまで変わらなかったら、それは永遠と同義じゃねェのか」
「……さぁね」
 彼の前に立つ。その顔を覗き込んで、リボーンは思う。
 淡い、氷にも似た、色。
 今にも溶けて、消えて、
 無くなりそうな。
「……ツナ」
「ん?」
「ツナ」
「何?」
 声は、優しい。
 何故。何故自分は。
「頼む。頼むから、横にいろ」
「いるよ」
 にこり、笑うその唇に、リボーンは己のそれを押し付けた。
 願いと、
 祈りと、
 想いと、
 その全てが無意味な事を、知っている。
「……頼む」
 いつから自分はこんなにも弱くなって仕舞ったのだろう、とリボーンは溜め息を吐いた。

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