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( 2024/11/28 )
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故意天災
( 2007/11/04 )
『大空の失墜』への感想有り難う御座いました。ってかいつもメッセージ有り難うですvV
白蘭良いですねー。こう、適度に狂ってる感じが(待)。
《大賢者》更新してないな。ストックはあるのに。
故意天災
白蘭良いですねー。こう、適度に狂ってる感じが(待)。
《大賢者》更新してないな。ストックはあるのに。
故意天災
沢田綱吉が救出された時、彼は完全に正気を無くした状態だった。
両手両足にはカードキー式の枷が嵌められ、眼は虚ろで口の端からは涎を垂れ流し、それを認識出来てもいない。その惨状に獄寺達は数秒言葉を失った。
「……ナ、ツナ!」
引き攣った声で山本が叫ぶ。掛け寄って抱き上げようとして自分の体が返り血に塗れている事を思い出し、獄寺に彼を預けた。
「10代目……!」
答えは無い。服の端で涎を拭ってやり、濁った瞳を覗き込む。
「自白剤を使われたのか……? クソッ!」
「自白剤? そんな信憑性の無いもの―――」
「有効ですよ」
使うのか、と疑問を挟んだ雲雀の声に、六道のそれが被る。不愉快げに振り返った黒曜石に、彼は息を吐いた。
「彼は―――《大賢者》ですから」
「……またそれかい」
事実のみを《識る》もの。
故に真実を知らぬ者。
真実ではなく事実を求める者達にとって、この上無く便利な存在。
だからこそ。
唇を噛んだ雲雀と相対する六道の表情は極めて冷静だった。眼の前の光景が見えぬかのように、けれど確かに不機嫌な表情で後ろを流し見る。
「アルコバレーノ」
「……何だ」
大切な生徒の様子に言葉を失っていたリボーンが、末恐ろしい程に凍った眼で六道を見遣る。
動揺も当然だ、と彼は思う。自白剤を使われれば後遺症が残る場合が殆どだし、場合によっては死に至る。
そう言った意味で、彼は――否、彼等は――幸運だった。極めて。
「名を」
六道は言った。
「名を、呼んで下さい。《大賢者》―――綱吉君の、ね」
貴方の声が、恐らく鍵です。
「何……?」
互いの声は低い。訝りながらもリボーンは綱吉に近付いた。どちらにしろ、拘束具は外さなければ。
途中で奪ったカードキーを持った手で彼の頬を撫で、小さく呼び掛ける。
「ツナ―――」
「……ん」
同時、綱吉が動いた。
気付いた時には、カードキーが綱吉の唇に挟まれている。呆然とする獄寺の腕を擦り抜けて立ち上がり、地を蹴る。
カードキーを口で放り投げ、空中で一回転して後ろに回されていた手でそれをキャッチして拘束具を外した―――と思った次の瞬間には足の枷も外れ、再び足が地を踏んだ時には綱吉の体は完全に拘束から逃れている。
反応出来ない面々の前で、六道だけが至極平静。
「《大賢者》、何か奪われた知識は?」
「……無い」
「それは重畳。休んで結構ですよ。後はこちらが」
守り切れなくて済みませんでした。
その謝罪の言葉に、綱吉は光を取り戻した眼で瞬いた。まだ頭が働いていないのかゆったりとした動きで、けれど確かに微笑む。
「頼んだ」
「ええ」
意識を失ってくずおれる体。それを支えて、リボーンは六道に視線を寄越した。
狂信を捧げる信徒の表情は見えない。
彼等が行った破壊活動は、恐ろしい程に徹底していた。全ての者を殺し全ての物を壊し、一つの証拠も残さない。
事後処理の全てをスカルに押し付けたリボーンは、綱吉が入院する病院に夜中に侵入した。
幼い寝顔を見遣る。医師の話では、後遺症は全く残らない。それどころか、薬物の殆どが体内で中和されていたそうだ。
「……おい」
声は綱吉にではなく。
「あれは、どういう意味だったんだ?」
「……クフフ」
同じ室内にいる六道骸へ。
「全く、不愉快ですねぇ」
まぁ仕方無い事なのでしょうが、と。
「文字通りです。《大賢者》は、君から名を呼ばれる事を正気に戻る鍵としていた。それだけですよ」
「……発狂する事を予測してたのか?」
「そうとも言えるし、そうとは言えないかも知れない。正しい答えなどは《識り》ませんよ、私は《大賢者》ではないので」
けれど、と。
「彼のあの状態は意図的なものです。《大賢者》はそれがどんな手段によってであれ、己の脳に何かしら外界から干渉があった場合には全ての記憶と思考力を一時的に封じるように最初から自己暗示を施していました」
その結果が―――あの惨状か。
「万が一封じられていた知識を引き出されたとしても、暗号化されています。解読には現代の最新鋭のワークステーションの計算速度で凡そ二千と五百年の時間が必要ですからね、その頃には彼の知識も無用のものとなっているでしょう」
多分。
その頃だって、人間は生きていて。
相変わらず愚かな事をしているのだろうが。
「……そんな事が可能か?」
「《大賢者》ならば。因みに、注射された薬物が中和されていたのも彼の脳のお陰でしょうね」
自己暗示による身体機能、及び分泌物の変化か。
にこり、笑う。その笑みに苛立ちを見い出して、リボーンは息を吐いた。
結局のところ、彼とて他の者と変わらぬ沢田綱吉を取り巻く者であるからして。
所詮無力なのだと。
「で、俺に八つ当たりに来たと? ご苦労な事だな」
「八つ当たりじゃありませんよ、貴方は嫌いです」
「……あぁ」
暫し考えて、ふとリボーンは思い至った。
六道骸が、自分を前にしてこうも苛立っている理由。
「俺が、ツナに、選ばれたからか」
「まぁ、僕は最初から論外だったのですがね」
舌打ちしそうな表情でそう言い、六道は顔を顰めた。
「彼は願いを知らない。知っているのは祈りのみですから」
だから、自分は、動けない。
「まず一に、自分の身近にいて、何かあった時に救出に来る可能性が最も高い人間。次に、この人間の前ならば完全に無防備になっても大丈夫だと確信出来る強さを保有する人間。そして、万が一裏切られた場合に、殺すのが容易である人間」
その全てに、リボーンは間違い無く当て嵌まるのだ。
「……俺の裏切りを考慮するか」
「彼は《本》が絶対である事を《識って》いるが故に、絶対ではない事を知っています」
成る程、と思った。
彼ならば、自分の事を簡単に殺せるのだろう。自分も彼も、互いに相手を信頼し過ぎている。
「……厄介だな」
万の思いを籠めて、リボーンは呟いた。六道が嘲笑する。
「厄介ではない人生などあり得る筈も無いのに」
「人生を語るか、お前が」
「いいえ?」
首を傾げて、彼は瞬いた。
「騙っているだけですよ、アルコバレーノ」
両手両足にはカードキー式の枷が嵌められ、眼は虚ろで口の端からは涎を垂れ流し、それを認識出来てもいない。その惨状に獄寺達は数秒言葉を失った。
「……ナ、ツナ!」
引き攣った声で山本が叫ぶ。掛け寄って抱き上げようとして自分の体が返り血に塗れている事を思い出し、獄寺に彼を預けた。
「10代目……!」
答えは無い。服の端で涎を拭ってやり、濁った瞳を覗き込む。
「自白剤を使われたのか……? クソッ!」
「自白剤? そんな信憑性の無いもの―――」
「有効ですよ」
使うのか、と疑問を挟んだ雲雀の声に、六道のそれが被る。不愉快げに振り返った黒曜石に、彼は息を吐いた。
「彼は―――《大賢者》ですから」
「……またそれかい」
事実のみを《識る》もの。
故に真実を知らぬ者。
真実ではなく事実を求める者達にとって、この上無く便利な存在。
だからこそ。
唇を噛んだ雲雀と相対する六道の表情は極めて冷静だった。眼の前の光景が見えぬかのように、けれど確かに不機嫌な表情で後ろを流し見る。
「アルコバレーノ」
「……何だ」
大切な生徒の様子に言葉を失っていたリボーンが、末恐ろしい程に凍った眼で六道を見遣る。
動揺も当然だ、と彼は思う。自白剤を使われれば後遺症が残る場合が殆どだし、場合によっては死に至る。
そう言った意味で、彼は――否、彼等は――幸運だった。極めて。
「名を」
六道は言った。
「名を、呼んで下さい。《大賢者》―――綱吉君の、ね」
貴方の声が、恐らく鍵です。
「何……?」
互いの声は低い。訝りながらもリボーンは綱吉に近付いた。どちらにしろ、拘束具は外さなければ。
途中で奪ったカードキーを持った手で彼の頬を撫で、小さく呼び掛ける。
「ツナ―――」
「……ん」
同時、綱吉が動いた。
気付いた時には、カードキーが綱吉の唇に挟まれている。呆然とする獄寺の腕を擦り抜けて立ち上がり、地を蹴る。
カードキーを口で放り投げ、空中で一回転して後ろに回されていた手でそれをキャッチして拘束具を外した―――と思った次の瞬間には足の枷も外れ、再び足が地を踏んだ時には綱吉の体は完全に拘束から逃れている。
反応出来ない面々の前で、六道だけが至極平静。
「《大賢者》、何か奪われた知識は?」
「……無い」
「それは重畳。休んで結構ですよ。後はこちらが」
守り切れなくて済みませんでした。
その謝罪の言葉に、綱吉は光を取り戻した眼で瞬いた。まだ頭が働いていないのかゆったりとした動きで、けれど確かに微笑む。
「頼んだ」
「ええ」
意識を失ってくずおれる体。それを支えて、リボーンは六道に視線を寄越した。
狂信を捧げる信徒の表情は見えない。
彼等が行った破壊活動は、恐ろしい程に徹底していた。全ての者を殺し全ての物を壊し、一つの証拠も残さない。
事後処理の全てをスカルに押し付けたリボーンは、綱吉が入院する病院に夜中に侵入した。
幼い寝顔を見遣る。医師の話では、後遺症は全く残らない。それどころか、薬物の殆どが体内で中和されていたそうだ。
「……おい」
声は綱吉にではなく。
「あれは、どういう意味だったんだ?」
「……クフフ」
同じ室内にいる六道骸へ。
「全く、不愉快ですねぇ」
まぁ仕方無い事なのでしょうが、と。
「文字通りです。《大賢者》は、君から名を呼ばれる事を正気に戻る鍵としていた。それだけですよ」
「……発狂する事を予測してたのか?」
「そうとも言えるし、そうとは言えないかも知れない。正しい答えなどは《識り》ませんよ、私は《大賢者》ではないので」
けれど、と。
「彼のあの状態は意図的なものです。《大賢者》はそれがどんな手段によってであれ、己の脳に何かしら外界から干渉があった場合には全ての記憶と思考力を一時的に封じるように最初から自己暗示を施していました」
その結果が―――あの惨状か。
「万が一封じられていた知識を引き出されたとしても、暗号化されています。解読には現代の最新鋭のワークステーションの計算速度で凡そ二千と五百年の時間が必要ですからね、その頃には彼の知識も無用のものとなっているでしょう」
多分。
その頃だって、人間は生きていて。
相変わらず愚かな事をしているのだろうが。
「……そんな事が可能か?」
「《大賢者》ならば。因みに、注射された薬物が中和されていたのも彼の脳のお陰でしょうね」
自己暗示による身体機能、及び分泌物の変化か。
にこり、笑う。その笑みに苛立ちを見い出して、リボーンは息を吐いた。
結局のところ、彼とて他の者と変わらぬ沢田綱吉を取り巻く者であるからして。
所詮無力なのだと。
「で、俺に八つ当たりに来たと? ご苦労な事だな」
「八つ当たりじゃありませんよ、貴方は嫌いです」
「……あぁ」
暫し考えて、ふとリボーンは思い至った。
六道骸が、自分を前にしてこうも苛立っている理由。
「俺が、ツナに、選ばれたからか」
「まぁ、僕は最初から論外だったのですがね」
舌打ちしそうな表情でそう言い、六道は顔を顰めた。
「彼は願いを知らない。知っているのは祈りのみですから」
だから、自分は、動けない。
「まず一に、自分の身近にいて、何かあった時に救出に来る可能性が最も高い人間。次に、この人間の前ならば完全に無防備になっても大丈夫だと確信出来る強さを保有する人間。そして、万が一裏切られた場合に、殺すのが容易である人間」
その全てに、リボーンは間違い無く当て嵌まるのだ。
「……俺の裏切りを考慮するか」
「彼は《本》が絶対である事を《識って》いるが故に、絶対ではない事を知っています」
成る程、と思った。
彼ならば、自分の事を簡単に殺せるのだろう。自分も彼も、互いに相手を信頼し過ぎている。
「……厄介だな」
万の思いを籠めて、リボーンは呟いた。六道が嘲笑する。
「厄介ではない人生などあり得る筈も無いのに」
「人生を語るか、お前が」
「いいえ?」
首を傾げて、彼は瞬いた。
「騙っているだけですよ、アルコバレーノ」
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