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二話。

「ボンゴレの雨の守護者と、嵐の守護者か」
 己を確認する声音に。
 思ったのは死の覚悟ではなく、あぁ丁度良い獲物が寄って来たと、ただそれだけだった。



「何でだろうな」
「――――」
「何でなんだろうな」
「――――」
「なぁ、如何思う?」
「――――」
「ごくで」
「黙れ」
 怒るでもなく苛立つでもなくただ淡々と、それこそ切り捨てるような口調で遮った獄寺に、山本は嘆息した。
 何故。
「何で俺達、生きてんだろ―――」
「それが十代目の遺志だからだ」
 沢田綱吉が死ぬ、その日の晩の最後に電話をしていたのは、彼等二人だった。
 本当に変わりなく、無事である事を当然のように受け入れていた自分達。
 なんて、愚かな。

 ――――ねぇ、二人共

 或いは、彼は。

 ――――生きて

 判っていたのかとすら、思う。

 ――――皆も。それが俺の祈りだから

 願いよりも遥かに、不確実で無意味なものだけどね、と彼は電話口で苦笑した。
 それが、最後だった。
 最後、―――だったのだ。
 それは、もしかしたらただ単にふと思い付いて言っただけの台詞だったのかも知れない。けれどそれでも、その一言が、自分を、自分達を繋ぎ止める。
「ツナ……」
 山本は、空を仰いだ。皮肉にも未だ存在するそれに少しだけ嗤う。
「何でお前は死んだんだ?」
 沢田綱吉が入院していた病院に刺客が入ったとの情報が入ったのは、全てが終わってからの事だった。
 駆け付けたそこは完全に瓦礫の山と化しており、綱吉も、護衛達も、それどころか他の一般利用者や病院関係者の死体すら、見付ける事は困難な状況だった。
「なぁ、獄寺」
「――――」
 山本に、獄寺は少しだけ視線を向けた。けれど、それだけ。
 渇き切った視線に己を重ねて自嘲が零れる。なぁ、ツナ、こんな俺達にこれから如何やって生きていけと言うんだ?
 それでも尚、彼等は死ねないのだ。沢田綱吉の最後の言葉が、胸にある限り、一生、生きていくしかない。
 ツナ。
 ツナ。
 ツナ。
 渇き切った雨と嵐が、空を想って。それでも涙は流す事なく。



 死して尚の束縛。
 心地良かった筈のそれが、今は苦痛でしかなかった。

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