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黎と闇。
本誌の十年後雲雀さんが綱吉をフルネーム呼びする件に就いて。
まぁ、綱吉が眼の前にいてもそれは自分の知ってる綱吉とは違うってんで、根本的な所は変わってないと知りつつ複雑な思いもあるんじゃねーかなーと。

あ、感想有り難う御座いましたですーvヒバツナ良いですよね!

 彼は、大嫌いな男の真後ろに立った。
 当然、相手は気付いている。気配を消しても感じ取れる程度の力量は持っているからだ。……気に食わない事に。
 この男が弱ければ、今頃自分は彼を殺していただろうに。
 気付いていても、反応しない。それが可笑しくて、哂う。
「雲雀恭弥」
「―――」
 名を呼ぶ。
「雲雀恭弥」
「―――」
 名を呼ぶ。
「雲雀恭弥」
「―――」
 三度。
 その全てを見事なまでに無視されて、六道骸は楽しげに嗤った。
 クフフと。
「『沢田綱吉』」
「―――」
 ぴくり、と今度は彼の肩が反応した。
「何故、彼の事をフルネームで呼ぶのですか?」
 常は『綱吉』と、下の名で読んでいたのに、と。
「……今の『彼』は、『彼』とは違うよ」
 その、台詞に。
 彼は心底からの嘲笑を浮かべた。
「臆病者」
「…………何だって?」
 ゆっくりと振り返った雲雀。初めて視線を向けてきた相手に、骸は笑みを深める。
「臆病者、と言ったのですよ。雲雀恭弥」
「誰が―――」
「貴方が、です」
 クフフ―――と笑う青年を見る瞳は昏い。その色だけは、骸は好ましいと思っていた。他は何もかも気に入らないが。
「恐いのでしょう? 沢田綱吉に」
 拒絶されるのが。
「それが、仮令いつの彼であったとしたとて」
 恐ろしくて堪らないのでしょう?
 穏やかに言い募る悪辣な男に、青年は殺意すら籠もった視線を向けた。
 否。
 本当は、殺意なら最初からある。
 出来得るならば殺して仕舞いたいのに。相討ちでも構わない。
 けれどそんな事は、『彼』が喜ばないから。
 そして、『彼』とは違う『彼』も悲しむであろうから。
 矢張り、雲雀恭弥は何も出来ない。
「……本当に本当に本当に本当に本当に本当に!」
 ぎりっ、と口の中で音。
「君など死んで仕舞えば良いのに!」
 それこそ。
「何故綱吉が死んで君が生きている!?」
「それはこちらの台詞です」
 骸は。
 其処で初めて、その美貌から笑みを消した。
「綱吉君の代わりに、君が死ねば良かった」
 互いに呪詛を吐き出して、睨み合う。
 黎と闇。
 現在の姿と、十年前の小さな姿が二人の脳裏に浮かぶ。
 もういない大空。
 取り残されても尚堕ちる事が出来ないのは、それこそが大空の意志であったから。
「心の底から、僕は貴方が嫌いです、雲雀恭弥」
「奇遇だね、僕も殺したいくらいに嫌いだよ、六道骸」
 何故互いが互いをこんなにも嫌い合うのか、それは両者が知っている。
 雲と霧は、全く同じものだからだ。
「……『彼』はもういない」
「けれど『彼』は此処にいる」
 雲に霧が返す。
 青年二人は数瞬の沈黙を経て同時に視線を逸らし、そして同時にこう吐き捨てた。
「「本当に、―――気に食わない」」

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