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( 2024/11/28 )
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来訪者
( 2007/11/17 )
来訪者
「……ん?」
今日の予定を考えていた時に不意に《識った》事に、綱吉は首を傾げた。
頭をかりかりと掻いて思考する。
沈黙は数秒。彼はやがて困ったような、けれど全く困ってなさそうな表情を浮かべた。
「まぁ良いか。何とかなるだろ」
世界の空隙を見詰めて、《大賢者》は苦笑する。
「10代目!」
思わず悲鳴じみた声を上げて綱吉を庇う位置に立った獄寺とは裏腹に彼は慌てるでもなく、予想通りとでも言うように友人の肩を押した。
「え―――」
「十年前の俺を宜しく。苛めないでね?」
力が強かった訳ではない。寧ろやんわりと、下手するとそこ等の女よりも弱い力しか籠められていなかったのにも関わらず、獄寺は体勢を崩した。体が抵抗を拒否したかのように。
だから当然、その砲弾は綱吉に向かうのであって。
顔を引き攣らせた獄寺と山本、眉根を寄せたリボーンの前で、綱吉の体が消失した。
「ツナ!?」
原因足るランボは既に屋外に放り出された後で、詰まりはこの部屋にいるのは四人だ。山本が駆け寄る。
「……『十年前』?」
そう、首を傾げたリボーンが、あぁそう言えばランボが先程バズーカを落としていたなと思い出す。故障か。また故障なのか。
予感と共にそこを見遣る。現れた子供に、獄寺を山本は絶句した。
「10代目……!?」
「ツ、ツナ―――なのか?」
「――――」
子供は、一瞬だけ目を瞠り、次いで顔を顰めて見せる。その表情に、彼等は顔を見合わせた。
「……俺に、何の用? 確か四秒前には自室にいた筈なんだけど」
淡々とした喋り方は、奇妙な平坦さを除けば今の綱吉と全く変わらない。少なくとも、五歳やそこらの子供の口調ではないだろう。
それでも彼の体が小さな子供である事は事実であったし、どうやら自分達の事を知らないのも本当であるようで。
「因みに教えておくと、俺の知識は無理矢理に引き出そうとしても無駄だ。痛覚を遮断出来るから拷問の類も通用しない」
そこまで聞いて、漸うリボーンは綱吉の勘違いを理解した。
「違うぞ、ツナ。別に俺達は、攫った訳じゃねェ」
「―――」
ちら、と流し目を送られる。静かな瞳。湖面のようなのに何も反射せず、ただ全てを見透かす。透明なのに何も見えない。
悪意も善意も敵意も好意もなかった。そもそもの興味が薄い。
不自然な程静か過ぎる瞳に現在の面影はなく。ただその能面じみた顔だけが彼が沢田綱吉なのだと教えている。
「では、何故?」
「偶然の産物だ」
取り敢えずは誤解を解こうと口を開く。しかしそこは流石に《理不尽存在》なのか、綱吉はすぐに納得したような表情で頷いた。
「成る程、十年後か。《本》に空いた奇妙な空白はその所為だったんだな」
「何日、こっちにいるんだ?」
「十日。その間は学校も行けないな。―――母さんは動揺しないだろうけど」
流石息子、母親の性質をよく理解している。
奇妙な部分で感心したリボーンを再び見遣り、綱吉は皮肉げに笑った。
「アルコバレーノのリボーン……ボンゴレか? 君達と俺がどんな関係を築いていたのかは知らないし、実際関係も無いだろうけど―――」
笑う。沢田綱吉は沢田綱吉と同じ表情で、けれど沢田綱吉とは違う感情で。
「暫く世話になるよ。宜しく」
あぁ、それと。とまるでどうでも良さそうに。
「一応否定しておくとこの世に偶然は存在しない。だって《世界》は《本》に描かれているんだから。神が作ったのはただの運命でしかなかったし、運命に偶然はなくけれどそれは必然でも悪戯でもなく始まりの始まりから終わりの終わりまでが全部決まり切った要するに未来の結果でしかないんだよ。後付けだから、後付けだからこそ、揺るぎながら揺らぎながらそれでも行き着く場所に違う事なく」
まるでそれって呪いみたいじゃない?
綱吉はそう笑う。沢田綱吉は。
そして神も、所詮運命に操られるのみなのだ、と。
今日の予定を考えていた時に不意に《識った》事に、綱吉は首を傾げた。
頭をかりかりと掻いて思考する。
沈黙は数秒。彼はやがて困ったような、けれど全く困ってなさそうな表情を浮かべた。
「まぁ良いか。何とかなるだろ」
世界の空隙を見詰めて、《大賢者》は苦笑する。
「10代目!」
思わず悲鳴じみた声を上げて綱吉を庇う位置に立った獄寺とは裏腹に彼は慌てるでもなく、予想通りとでも言うように友人の肩を押した。
「え―――」
「十年前の俺を宜しく。苛めないでね?」
力が強かった訳ではない。寧ろやんわりと、下手するとそこ等の女よりも弱い力しか籠められていなかったのにも関わらず、獄寺は体勢を崩した。体が抵抗を拒否したかのように。
だから当然、その砲弾は綱吉に向かうのであって。
顔を引き攣らせた獄寺と山本、眉根を寄せたリボーンの前で、綱吉の体が消失した。
「ツナ!?」
原因足るランボは既に屋外に放り出された後で、詰まりはこの部屋にいるのは四人だ。山本が駆け寄る。
「……『十年前』?」
そう、首を傾げたリボーンが、あぁそう言えばランボが先程バズーカを落としていたなと思い出す。故障か。また故障なのか。
予感と共にそこを見遣る。現れた子供に、獄寺を山本は絶句した。
「10代目……!?」
「ツ、ツナ―――なのか?」
「――――」
子供は、一瞬だけ目を瞠り、次いで顔を顰めて見せる。その表情に、彼等は顔を見合わせた。
「……俺に、何の用? 確か四秒前には自室にいた筈なんだけど」
淡々とした喋り方は、奇妙な平坦さを除けば今の綱吉と全く変わらない。少なくとも、五歳やそこらの子供の口調ではないだろう。
それでも彼の体が小さな子供である事は事実であったし、どうやら自分達の事を知らないのも本当であるようで。
「因みに教えておくと、俺の知識は無理矢理に引き出そうとしても無駄だ。痛覚を遮断出来るから拷問の類も通用しない」
そこまで聞いて、漸うリボーンは綱吉の勘違いを理解した。
「違うぞ、ツナ。別に俺達は、攫った訳じゃねェ」
「―――」
ちら、と流し目を送られる。静かな瞳。湖面のようなのに何も反射せず、ただ全てを見透かす。透明なのに何も見えない。
悪意も善意も敵意も好意もなかった。そもそもの興味が薄い。
不自然な程静か過ぎる瞳に現在の面影はなく。ただその能面じみた顔だけが彼が沢田綱吉なのだと教えている。
「では、何故?」
「偶然の産物だ」
取り敢えずは誤解を解こうと口を開く。しかしそこは流石に《理不尽存在》なのか、綱吉はすぐに納得したような表情で頷いた。
「成る程、十年後か。《本》に空いた奇妙な空白はその所為だったんだな」
「何日、こっちにいるんだ?」
「十日。その間は学校も行けないな。―――母さんは動揺しないだろうけど」
流石息子、母親の性質をよく理解している。
奇妙な部分で感心したリボーンを再び見遣り、綱吉は皮肉げに笑った。
「アルコバレーノのリボーン……ボンゴレか? 君達と俺がどんな関係を築いていたのかは知らないし、実際関係も無いだろうけど―――」
笑う。沢田綱吉は沢田綱吉と同じ表情で、けれど沢田綱吉とは違う感情で。
「暫く世話になるよ。宜しく」
あぁ、それと。とまるでどうでも良さそうに。
「一応否定しておくとこの世に偶然は存在しない。だって《世界》は《本》に描かれているんだから。神が作ったのはただの運命でしかなかったし、運命に偶然はなくけれどそれは必然でも悪戯でもなく始まりの始まりから終わりの終わりまでが全部決まり切った要するに未来の結果でしかないんだよ。後付けだから、後付けだからこそ、揺るぎながら揺らぎながらそれでも行き着く場所に違う事なく」
まるでそれって呪いみたいじゃない?
綱吉はそう笑う。沢田綱吉は。
そして神も、所詮運命に操られるのみなのだ、と。
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